2015年2月22日日曜日

book308, 309 『ウォーターシップ・ダウンのウサギたち 上/下』 (改訳新版2006) リチャード・アダムズ

つぎつぎと襲いかかる困難に
知恵と勇気と友情で立ち向かうウサギたち
命を賭けた戦いがはじまる・・・・・

【概要】                    

野うさぎを主人公に描いた児童文学作品で、リチャード・アダムズ (1920-) の処女作 (1972) である。タイトルはイングランドのハンプシャー州の北部にある丘の名前にちなんだもので、アダムズ自身が育った場所でもある。この物語は、もともとはアダムズが、田舎旅行の間自分の子供たち――二人の娘たち、ジュリエット (1957-) とロザモンド (1958-)――に話して聞かせた物語をまとめたもの。1973年にカーネギー賞とガーディアン賞をダブル受賞した。世界中をとりこにした名作が、今、改訳新版でよみがえる。

"Watership Down" (1972), Richard Adams.

【読むきっかけ&目的&感想】               

知人に面白かった本として教えてもらった。図書館で借りたんだけど、児童図書室ではなくティーンズコーナーにあったので、探すのに手間取ってしまった。見つけたときは、思ったより字が小さくてページ数が多いのにびっくりしてしまった(笑)。

さくら好み ★★★★



登場人物、、、じゃなくて登場ウサギが多いのと独特の世界観のため、最初ちょっととっつき難かったけど、それに慣れると同じ理由で逆にどっぷりハマってしまった。主人公ヘイズル、その名が示すように赤褐色のオス兎の心理描写が秀逸で、勇敢で賢いだけでなく、臆病で迷い絶望したり、相手を値踏みしたりで、大人にも読み応えのあるストーリーになっていた。

【備忘録】                                        

・農場のウサギ

こうして、ウサギたちは、農場主の望みどおりに暮らし、いつもほんの数匹が姿を消した。彼らは、奇妙な風習を身につけるようになり、ほかのところのウサギとはちがうウサギになってしまった。

彼らは、事実を知っていた。しかし、自分でごまかして、なんの問題もないふりをしていた。食べ物はよし、暮らしは安全、恐ろしいもののただ一つだけ。それも、ところどころで襲われるだけで、ここから逃げ出したくなるほど、一度にわっと襲いかかってくるわけではない。そんなわけで、ここのウサギたちは、野生の生き方を忘れた。エル - アライラーまで忘れてしまった。ウサギの敵が用意した村に住んで代価を払うウサギに、策略やずるがしこさなど必要なかった。

・飼いウサギ

飼いウサギたちが、箱の中の暮らしを、つまらないけれど安全だと考えていることがよくわかった。彼らには、何か手だてがあるらしく、エリルのことをよく知っていて、野生ウサギで長生きするものは少ないと信じているようだった。ヘイゼルが来てくれて、話しができたことをとても喜んでいることは、よくわかった。話に興奮して、単調な暮らしの気晴らしになったからだ。

しかし、飼いウサギたちには、決意を行動に移す力はまったくなかった。自分で心を決めることを知らないのだった。

・意味探しは二の次

「しかし、そんな暮らしをしていたら、きっとずいぶん変わってしまわないかな?」と、ダンディライアンがたずねた。

「まったく、そのとおり」と、ホリーはこたえた。「ほとんどのウサギは、命令されたこと以外は、何もできない。エフラファの外に出たことがないから、エリルの臭いをかいだことがない。エフラファのウサギのただ一つの目標は、幹部階級になることだ。特権があるからね。そして・・・」

・アレゴリー

『ウォーターシップ・ダウンのウサギたち』は指導者とか、指導を表現するアレゴリーと評されたりします。

作家が、自分の作品はアレゴリーではないと主張するわけは、彼らが、なぜこういう作品を書いたかという問題に関係があるからでしょう。アレゴリー文学の作者は、例えば「理想の指導者とは何か」をはっきりと読む人と聴く人に知らせることを第一の目的として作品を書きます。物語の作者は、何よりもまず、おもしろい話を創って、そのおもしろさを読む人、聴く人といっしょに楽しもうという気持ちで創るのだと思います。自分が心から楽しんで書いた話を、まず楽しんでもらいたいのではないかと思います。意味探しは二の次、三の次でいいのです。

・作者 リチャード・アダムズ

1920年、イギリスのバークシャー生まれ。オックスフォード大学で歴史を学び、第二次世界大戦従軍後、政府機関で働く。1949年に結婚、1957年にジュリエット、1958年にロザモンドという二人の娘を授かる。

・「『ウォーターシップ・ダウンのウサギたち』の諸要素」というエッセー

博識と言えば、アダムズは、この物語の背景になった名作や愛読書について語った「『ウォーターシップ・ダウンのウサギたち』の諸要素」というエッセーを発表していますが、それを見るとみごとにイギリス文学の傑作がならんでいます。『たのしい川べ』、『ロビンソン・クルーソー』、『ガリバー旅行記』、『宝島』、『オリバー・ツイスト』、『クリスマス・カロル』、『ホビットの冒険』、『蠅の王』、『動物農場』、『ふくろう模様の皿』等々。おとな向き、子ども向きなどを問わず、イギリスの誇る文学作品がずらりとならんでいます。よい子どもの文学には、はるか昔から人々が営々と積み上げた人類の知恵が土台になっていることがよくわかります。

・ウサギの名前は大部分が植物名

豊かさと言えば、植物がふんだんに登場してくることも、その特徴の一つでしょう。ウサギの名前からして、大部分が植物名です。主役の一匹ヘイズルはハシバミのことです。

・登場キャラクターの一部


ヘイズル Hazel
ファイバー Fiver
ビグウィグ Bigwig
ブラックベリ Blackberry
ホリー Holly
ダンディライアン Dandelion
シルバー Silver
ピプキン Pipkin
ハイゼンスレイ Hyzenthlay
ブラッカバー Blackavar
キハール Kehaar

ウンドワート将軍 General Woundwort
キャンピオン隊長 Captain Campion

フリス Frith
エル・アライラー El-ahrairah
虹の王子 Prince Rainbow
ラブスカルト Rabscuttle
インレの黒ウサギ Black Rabbit of Inlé