2015年5月17日日曜日

book322 『日本語のアクセント、英語のアクセント ―どこがどう違うのか―』 杉藤美代子 (2012)

日本語は高さアクセント 英語は強さアクセントと言われてきたが
本当にそうなのか? 両者はいったいどこがどうちがうのか?



【概要】                    
第 1 章 しゃべるとはどういうことか
第 2 章 日本語と英語のリズム
第 3 章 日本語と英語の「音」と「声」
第 4 章 日本語アクセントの歴史および、英語アクセントの研究小史
第 5 章 「おそ下がり」と「無声拍にアクセント」  
第 6 章 英語話者は日本語アクセントをどう聞きとるか
第 7 章 アクセントの知覚──強さではなく高さによる!
第 8 章 「筋電」──脳からのアクセント指令
第 9 章 脳からの「アクセント指令」を観察する
第 10 章 英語と日本語のアクセントはどこがどう違うか
【読むきっかけ&目的&感想】               

図書館で本棚を眺めていてたまたま見つけた本。目次をざっとチェックしたらとても面白そうだったし、柔らかい文体で分かりやすく書いてあったので借りてみた。

さくら好み ★★★

言語の発音はそれぞれ独特の特徴を持っている。以前何かの映画HPで「雑踏での声の集合音」を使っているのがあって、それの各国版(英語、スペイン語、日本語)を聞いたとき、集合音のため何を言っているかは分からなくても、その言語らしい音をしているのが分かることをとても面白く感じたことがある。それを思い出しながら本書を読んだ。

読む前は英語の発音についての記述を楽しみにしていたけど、実際に読んでみたら日本語の発音についての記述のほうがより興味深かった。日々何気なく使ってる日本語、その発音の奥深さを垣間見た気がした。

【備忘録】                                       

・母音、子音はどのようにして作られるか

発声のしくみの注目点は次の3つである。
(a) 息が出ているのは口か鼻か
(b) 舌の位置
(c) 音の出し方
母音では息はどこにも邪魔されず外に出る。子音/ m // n /などの場合は唇で息が通るのを邪魔して鼻から息が出るので鼻音と呼ばれる。/ t /では舌を上げて空気が通るのをほんの一瞬だけ邪魔される。/ k /は下の奥が上げられる。/ t // k /は破裂によって作る音、つまり破裂音だ。/ s /などは摩擦音と呼ばれる。このように、舌によって数種類の音が作られる。これらは子音と呼ばれる。なお、子音には声帯が振動する有声子音(m, n, g, d など)と、声帯振動のない無声子音(s, t, p, k など)の2種類に分けられる。

・日本語も英語も高さアクセント

欧米では、もともと英語のアクセントはストレスと呼ばれ、音の強さに、あるいは長さに基づく(Fry, 1955)との説が一般的であった。

しかし、先にのべたように Bolinger(1958)は、英語のアクセントの決めては高さであるという結論を導いた。 Break both apart. の文において、各音節中の母音の音源を強くした場合と、音を高くした場合とのいくつかの合成音声を用いた実験では、アクセントの知覚には、音源の強度よりも高さがより有効であると結論付けている。 Bolinger によれば、「文中でアクセントのおかれる音節をきわだたせる要因は、高さの顕著さであって、そこへ少々余分な持続時間とやや余分な強さとを加えたものがアクセントである。」とする。現在では、英語の音声合成は高さを主な条件としている。

筆者の研究では、声の高さの動態を、日本語の主要な2方言(東京アクセントと関西アクセント)それぞれ550単語、および英語400単語について、全波長を測定して基本周波数の時間的変化の実態をを比較し検討してきた。その結果、英語の単語アクセントも日本語の場合と同様に、声の高さの動的変化によるものであることが明らかになった(杉藤、1980、1982)。

なお、 Bolinger は、上記のように「英語のアクセントは高さの顕著さ、そこへ余分な持続時間と余分な強さを加えたもの」とある。筆者の実験と類似点は見られるが、実験の内容については、明らかに、質量ともにスケールが異なる。その上、筆者の場合は、「高さ以外の他の条件」は一切必要でない。明らかに「日本語も英語も高さアクセント」である。これは筆者が長年かけて音響音声学的、心理学的、音声医学的実験等によって確かめることができた実験の結果であった。

・英語と日本語の アクセントと語りの特徴

日本語と英語のアクセントの違い、また、日本語話者と英語話者の話し方の違いをまとめると、次のようになる。

(A) 日本語のアクセント
・話しことばの中でも、各単語アクセントによる高低を表現する。
⇒アクセントはそれぞれの単語の意味の区別に役立っている。
(B) 英語のアクセント
・話しことばの中で各単語のアクセントは表現しない。その単語を強調する場合に、該当する単語のアクセントを生かしてそこを高める。つまり、
・話者が話の中で強調したい単語の、アクセントのある音節を高く強くはっきり言う。こうして、
⇒話の要点をわかりやすく伝える。

(A’) 日本語話者の話し方
・読みを始めるとき、声を高くする傾向がある。
・各単語のアクセントの高低を話の中でも表現する。このため、文中で声が上がったり下がったりする。
⇒聞き手には、話者がとくに強調したい点が何か明瞭でない。
(B’) 英語話者の話し方
・普通、楽な高さでやや低めに言い始める。
・文中の各単語のアクセントはいちいち表現しない。
・話者にとって重要な単語の、アクセントのある音節を強調して言う。結果としてそこは高くなる。
⇒言いたいことが何なのかそこを強調して話すので、聞き手には内容が理解しやすい。
・杉藤 美代子 (すぎとうみよこ)

東京都出身。1941年、東京女子高等師範学校(現、お茶の水女子大学)文科卒業。京都大学文学部言語学科故泉井久之助教授の指導を受ける。文学博士(東京大学)。 元大阪樟蔭女子大学名誉教授。元日本音声学会会長。2012年2月、没。