2016年12月23日金曜日

book360 『鹿の王 上下巻』 上橋菜穂子 (2014)

【2015年本屋大賞 受賞作
第4回日本医療小説大賞 受賞作

おれたちは、身の内に、無数の命を飼っている。
――いや、飼ってるって言い方はよくねぇな。
無数の小さな命が住んでいて、
それが寄り集まって人になっておるんだろう。

森って言ったのは、そのことだよ。


人の身体も同じなんだよ。

ふだんは見るこたぁできねぇが、
おれたちの中には無数の小さな命が暮らしてるんだ。
おぎゃあ、と生まれたときから、
そいつらが、おれたちの中にいたのかどうかは、
おりゃ、知らねぇ。

でもよ、

後から入ってくるやつらもいて、
そいつらが、
木を食う虫みてぇに身体の内側で悪さをすると、
人は病むんじゃねぇかと思ってるんだ

【概要】                                        

強大な帝国・東乎瑠にのまれていく故郷を守るため、絶望的な戦いを繰り広げた戦士団“独角”。その頭であったヴァンは奴隷に落とされ、岩塩鉱に囚われていた。ある夜、一群れの不思議な犬たちが岩塩鉱を襲い、謎の病が発生する。その隙に逃げ出したヴァンは幼子を拾い、ユナと名付け、育てるが・・・

【読むきっかけ&目的&感想】           

いやぁ~、読み始めてビックリしたんだけど、主人公が人間だった。てっきり、鹿、あるいは鹿っぽい架空の種族の物語かと思いこんでいたよw

昨年の本屋大賞を受賞してるけど、その時は「ファンタジー小説、かぁ・・・」と興味を持てなかった。その頃の私は、ファンタジーといえば海外モノ、おとぎ話の延長といった印象しか持ち合わせておらず、それも映画で観る程度で活字で読んだことは殆どなかったのだ。(本作が医療小説大賞を受賞していたのは、読み終わってから知った。)

その後、知人に同著者の「精霊の守り人」が面白いと教えてもらい読んだところ、ファンタジーに対する印象がガラリと変わった。和風/アジアっぽい世界観が散りばめられていること、主人公が「大人」だということに衝撃を受けた。それがすっごく面白かったので、「鹿の王」も読んでみたくなり読んでみた。

さくら好み ★★★★★


私にとって架空世界の面白さは、作者が構築した世界そのものにある。その世界の文化に魅力があればどんどん惹き込まれていくが、そうじゃないと最初の100ページに満たないところで挫折してしまう。まぁ、これはファンタジーに限らないけどね。その点、『鹿の王』は100点満点だった!最高に私好みだった!!!

病がテーマの一つになっているところが面白かった。

今から六年ほど前、ランニングを時々するようになったのをきっかけに、筋肉や身体の働き、食と身体の関係に興味を持つようになった。その後、大病を患い、必要に迫られて治療法について調べ、病そのものにも興味を持つようになった。そんなことを通して私なりに考えた色々に思いを巡らしながら読んでいたら、現代小説やノンフィクション以上のリアリティを随所で感じた。

文化の多様性がテーマになっているところも面白かった。

これは「精霊の守り人」でも感じたので、おそらく共通したテーマなのかな・・・? 文化が違うと同じことが違う見え方をする、ということが登場人物を通して丹念に描かれる一方で、文化が違っても同じ感じ方をする、ということも描かれている。

死生観/生死観が描かれているところでは考えさせられた。

こういったことまでを深く描き込めるのは、主人公たちが大人ならではかもしれない。ファンタジーって何だったっけ?、と混乱するほどだった(笑)。自分が子供の時にこんな本を読みたかった。

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↓は 角川書店 特設サイト にあるイメージイラスト。読み終わってから見たけど、かなりイメージ通りだった。アニメ化されてるのかも?、と思ってググってみたけどされてなかった。